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本書はたたかう青年たちへのエールだ ―沢良木和生『幕末京都大火秘聞 町人剣 たかとみ屋晃造』を読んで―

 13.2.12
 12年1月10日付の当ブログで触れた「夫婦剣」に続いて、同じ沢良木和生さんの小説「幕末京都大火秘聞 町人剣 たかとみ屋晃造」(学研)を紹介します。 

 西陣で生糸を扱う高富屋の跡取りである晃造は、町人でありながら短刀と手裏剣、更に体術と敵を殺さない不殺の心得を見につけていく。
 時は幕末―、洛中で対峙する尊皇を掲げる長州藩と、会津・薩摩を中心とした幕府軍が一たび御所で戦闘となれば京の街が焼かれるのは必至。長州軍の西陣進出を食い止めるには御所と西陣の街の間の堀川の橋を落とすしかないと決断した晃造は、様々な妨害を持ち前のリーダーシップで乗り越え、仲間と計画を実行に移していく―、というのがそのあらすじ。

 前半はやや冗長な感があったものの、晃造ら京の若者たちが「自分たちの街を守ろう」と立ちあがっていく描写は見事、息つく間もなく一気に読了してしまった。
 著者は「朝鮮戦争反対!平和を守ろう」と正義感に燃えて京都で反戦運動に身を投じた60年前の自らと仲間の姿を幕末の青年たちに重ねてこの小説を書かれたのは間違いない。
 未来は青年のもの―、それは幕末も60年前も、そして現在も同じ。本書は原発NO、派遣切りNOと立ちあがる青年たちへの熱いエールとなるであろう。実に読後感さわやかな作品である。

by takeshi_yamagen | 2013-02-12 22:56 | 積ん読・乱読・熟読日記  

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