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「行こいな」 ―NHKドラマ「夫婦善哉」を見て―

 13.8.27
 24日夜放送のNHKドラマ「夫婦善哉」。
 御存じ大店のアホボン柳吉(森山未來)と北新地の芸妓蝶子(尾野真千子)の恋の物語ですが、私が小さかった頃まだかすかに残っていた戦前の大阪の風情を再現しようという制作者の強い意思が感じられる作品に仕上がっています。
 例えば蝶子の実家の長屋の様子。膏薬の香りとトイレのアンモニア臭がごちゃまぜになった湿っぽい空気が今にも画面から漂ってきそうです。長屋のすぐ横のちょっとした石段も、玉造稲荷のわきあたり、あるいは天王寺は寺町あたりの上町台地の斜面を思い起こさせて心憎い限り。
 また役者さんの話す大阪弁が絶妙。特に印象深かった言葉は、柳吉が夜初めて蝶子を誘った時に発した「行こいな」。
「あんたも覚悟できてるんやろ」とちょっと強引に暗示をかけながら「もうええやろ」と懇願する大阪男の精いっぱいの口説き文句。「行こうか」はよそよそしすぎ、「行こか」ではあっさりしすぎてお食事どまり!?、かと言って「行かへんか」は軽すぎて真剣味?が問われる…、あの場面は「行こいな」以外にないのです。その「行こいな」効果もあってか蝶子は柳吉と夜のミナミの街へと消えていくのでありました。
 この微妙なニュアンス、関西以外のお人にはわかってもらえへんやろなぁ(08/5/22付ブログ参照)。 

by takeshi_yamagen | 2013-08-27 00:22 | 日本語ってむずかしい  

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