山元たけしの あの日その時、そしてこれから

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カテゴリ:積ん読・乱読・熟読日記( 34 )

あなたの傍に生まれ変わる―、何度でも、何度でも…、 ―佐藤正午「月の満ち欠け」を読んで― 

 17.8.30
 佐藤正午さんの直木賞受賞作「月の満ち欠け」を昨日書いた缶貯金の一部を使って購入。なんか心に引っかかって「早く読みたいなぁ」と思っていた本で、一気に読了しました。ちなみに直木賞を取った作品を文庫本ではなく単行本で買ったのは宮本輝さんの「蛍川」を高校時代に買って以来40年ぶりのこと(結構文学的にはマセガキだったようです)。
 愛するあなたをこの世に残して逝った人間は、もう一度逢いたくて、秘密を話したくて、声を聞きたくて、あなたの傍に生まれ変わる、そしてシグナルを送る―、何度でも、何度でも、月が満ちて、欠けるように…。
 絶対にありえない話です。「でも、ちょっと待てよ…」と思い当たる経験が誰にも一つや二つあるのではないか、と思わしめる小説です。実は私にも秘密を仄めかしながら、そしてささやかな希望を語りながら「85歳でまた会おう」という言葉を残して逝ってしまった友がいます。年老いてからふっと傍らに会いに来てくれるのでしょうか。
 作者の佐藤正午さんは「作家の力量は嘘を本当に見せること」(「しんぶん赤旗」17/8/28付)と話しておられますが、さらに進んで佐藤さんは「嘘を心地よく信じさせること」に成功しているのではないでしょうか。それは希望と救いに繋がっていく嘘でもあります。
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by takeshi_yamagen | 2017-08-30 13:03 | 積ん読・乱読・熟読日記

君の膵臓をたべた君の意見が聞きたい

 17.5.30
 うちの一人息子、自身の感動した本を「お父さんもこれ読んどき」と、時々強く推薦してきます。
 そんな息子の最近のオススメ本が「君の膵臓をたべたい」(住野よる著)。
 膵臓の病気で余命幾ばくもない女子高校生と偶然そのことを知ってしまった主人公(男子高校生)のおよそ四ヶ月の交流を描いた物語です。読後息子に「おもしろかったけど、あなたのいうような号泣まではいかなかった。小説には読むタイミングちゅーもんがあって、お父さんが高校時代にこの小説があって読んでたらもっと感動したかも知れないな」と感想を述べました。ロッテに恋焦がれる若きウエルテルの悩みを今知ったところで感情移入できないのと同じです。
 また亡くなった彼女の友人と主人公とのやりとりからなる最終章は、作者の意図はわかるけど、「付け足し」感は否めません。まぁそう言うと「あそこが大事なとこ。読みが浅いわ」と反撃されるんでしょうね。
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by takeshi_yamagen | 2017-05-30 13:44 | 積ん読・乱読・熟読日記

2016 廃書の秋

 16.11.18
 前回は手に入れた本の話でしたが、今回は手放す本の話です。
 来年早々にも衆院選挙が囁かれる中、今しかないとばかりと11月は部屋の掃除と片付けに精を出しております。
「書庫」も満杯状態で泣く泣くいくばくかの書籍は廃品回収業者に出して処分することにしました(以前あまりの買い取り価格の安さにショックを受け、それが今でもトラウマになって古書店に持って行くのはなんとなくためらわれるのです)。その中には2009年に亡くなった母和子が愛読していた向田邦子、有吉佐和子、田辺聖子、澤地久枝、佐藤愛子、岸田劉子など女流作家の著書計20~30冊もあります(例外的に筒井康隆の本がありますがそれは母と筒井氏が大阪市立東中学の同級生であったことによるものです)。これらの作家のみなさんには恨みはもちろんありませんが、今後の私の人生の限られた読書時間を考えると、仮に読むことがあってもその順位は限りなく遅くなるであろうと考えての決断です。
 ところがその母の蔵書のいくつかの最終ページに購入年月日と思われる日付やkazukoのサインがあるのを発見し、またその決断が揺らいでいます。
 感動の度合いはいろいろでも、どの本も私や家族の頭のこやしにいくばくなりともなってきてくれたわけで、手放すのは本当に心苦しいものがあります。
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by takeshi_yamagen | 2016-11-18 11:58 | 積ん読・乱読・熟読日記

2016 読書の秋

 16.11.16
 久しく積ん読状態だった「海辺のカフカ」。再び村上春樹さんがノーベル賞候補になったことを機に先日一気に読了しました。複数の伏線の話が最後に一点に集中する展開―、今まで読んだ村上さんの著書(といってもデビュー作「風の音を聴け」と「ノルウェイの森」、あと若干の短編しか読んでませんが…)の中では一番ページがすすんだものの、やっぱり「わかるようで、わからん…」というのが率直な読後感です。ハルキストへの道、未だハルカなり。
 さてよく読書感想を交換する仲間にAさんとその娘さん親子がおられます。
 先日その娘さんと手紙形式の小説に話題が及んだとき紹介されたのが、宮本輝「錦繍」。猟奇的な事件にまきこまれ、愛しながら別れた二人の手紙のやりとりからなる作品。実はこの作品、宮本ファンの間でも好き嫌いが分かれるとのことです。確かに許容できる倫理観の程度によって評価は分かれるだろうなと思った次第。まぁハッピーエンドでめでたしめでたしでしたが…。
 そしてお父さんのAさんから「山元君、国政選挙出るんやったら読んどき」と薦められたのが、「バーニー・サンダース自叙伝」(大月書店)。そう、アメリカ大統領選挙で民主党の指名をクリントンと最後まで争ったあのサンダースさんの本です。これはただいま読破中。
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by takeshi_yamagen | 2016-11-16 15:32 | 積ん読・乱読・熟読日記

越谷オサムを読む ―「陽だまりの彼女」と「金曜のバカ」―

 16.7.16
 火花散らしまくりの選挙話が続いたので今回は軽めの読書話にお付き合いを。
 映画と原作、見てから読むか読んでから見るか―、時々議論になることがあります。順番こそ無頓着ですが、映画を見て改めて原作者を評価したり、原作をさらに引き立たせる映画監督や脚本家の腕に感心したりと、この一粒で二度おいしい二本立て作戦、私もよく敢行します(まぁ、ごくまれに二度失望することもありますが…)。
 先日先に映像を見てしまった「陽だまりの彼女」(新潮文庫)は必然的に「見てから読む」パターンになってしまいました。当然と言えば当然ですがあらすじは映画とほぼ同じ。しかし原作のほうがミステリー度が、映画のほうがハッピーエンド度とファンタジー度が各々高くなっていて、その微妙な温度差のシャワーを楽しめました。
 ところで「陽だまりの彼女」を買った際に「同じ作者だからついでに買っとこう」と購入したのが越谷オサムさんの短編集「金曜のバカ」(角川文庫)です。
 その登場人物の多くは、まぁ女の子と懇ろになることしか考えていない、おバカで間抜けでとんでもない男子中学生・高校生たち。彼らが、似非恋愛、デートもどきの経験を通じて、世の中おバカで間抜けでとんでもないことばかりじゃないことに気付いていくのが、なんとも微笑ましいというか、かわいいというか、健気というか、切ないっていうか…。男の子が大人になっていく時に避けて通れない「通過儀礼」をぜぇーんぶ詰め込んだみたいな本です。どうしようもなくおバカで間抜けでとんでもなかった私が言うんだから間違いない!?(5/7付ブログ参照)
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by takeshi_yamagen | 2016-07-16 14:39 | 積ん読・乱読・熟読日記

ここんところの積ん読・乱読覚書⑤ 阿川さんと米原さん

 16.2.20
 能の間の狂言よろしく理屈っぽい本を読んだ後などによく目を通すのが阿川佐和子さんの本。特に旅に関するエッセイは実におもしろくついつい読みふけってしまいます。そんな彼女の旅本のひとつ「タタタタ旅の素」(文春文庫)に収容されている「湯の力」はラストの落ちが秀逸。思わずニヤッと笑ってしまいました。ヤマモトおすすめベストエッセイの一つです。ぜひご一読あれ。
 同じく頭休めによく読むのがロシア語通訳米原万里さんの本。お上品とお下劣、知性と痴性の間の壁をどちらにも落ちることなくひょいひょいと飛び跳ねる文章―、いつも楽しませてもらっています(お亡くなりになったのは重ね重ね残念です)。先日読んだのは「米原万里の愛の法則」(集英社新書)。その第四章「理解と誤解の間」に登場するカナダ出身の悪ガキ同級生チボーにまつわる経験談にはいろいろ考えさせられました。これもお薦めです。

 追伸;昨年末の市長選立候補の記者会見で私は趣味のひとつに読書をあげ「哲学書から漫画までまさに乱読です」と付け加えました。記者のみなさま、これで私の乱読、さらには「積ん読」の実態、ご理解していただけましたでしょうか(まぁ、この間に限っては哲学書と漫画はありませんでしたが…)。
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by takeshi_yamagen | 2016-02-20 17:40 | 積ん読・乱読・熟読日記

ここんところの積ん読・乱読覚書④ マルキストとハルキスト

 16.2.19
 前の職場の同僚Aさんから「マルキスト(マルクス主義者)は小説あんまり読まない」と言われたことがあります。「マルクスやレーニンの理論書ばっかり読んでいる」というわけです。私が「そうですかねぇ」と曖昧な返事をすると「いっぺん『カラマーゾフの兄弟』とか読んでみぃ。人生観変わるで」と続けられました。
 幸か不幸かカラマーゾフ兄弟に人生を変えられることはありませんでしたが、それ以来話題になった作品などはできるだけ目を通すよう心がけるようになったのは事実です。そんなわけで最近読んだのが村上春樹さんのデビュー作「風の歌を聴け」。分かったような分からんような、面白いような面白くないような…、微妙な感じです(ちなみに「ノルウエィの森」を読んだ時も同じ感想を持ちました)。「その不安定な読後感が村上作品の魅力だ」という友だちがいましたが、う~ん、ますます分からなくなってきました。私の場合ハルキストへの道はまだ遠いようです。
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by takeshi_yamagen | 2016-02-19 13:27 | 積ん読・乱読・熟読日記

ここんところの積ん読・乱読覚書③ 理系本も読んでます

 16.2.15
 歴史書ついでにもう一話。
 偶然でしょうが昨年12月に二つの蘇我氏本が出版されました。「蘇我氏-古代豪族の興亡」(倉本一宏  中公新書)と「蘇我氏の古代」(吉村武彦 岩波新書)です。両書を並行して読んで最新の研究成果や両氏の見解の差などを楽しみたいと思います。
 苦手と言いつつ理系の本も読んでいます。「生物と無生物の間」(福岡伸一 講談社現代新書)です。著者の文才と研究史を軸にしたノンフィクション調の文体にも助けられて最後まで読みきりました。「生命の定義」本はずっと昔「生命の起源」(オパーリン 岩波新書)を読んで以来でしょうか。本書後半で細胞の器官ー核や小胞体、細胞膜などーの構造が生き生き記述されており興味深かったですね。40年の時を経て高校の丸暗記「生物」から一歩抜け出した感じかな。ただ著者の主張する「動的平衡」を理解するには再度熟読が必要なようです。
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by takeshi_yamagen | 2016-02-15 09:34 | 積ん読・乱読・熟読日記

ここんところの積ん読・乱読覚書② やっぱり私は文系人間?

 16.2.12
 小川洋子「博士の愛した数式」(新潮文庫)―、主人公の博士のような自らの携わる学問に対しこれほど夢中になれる人って羨ましいなぁ、なんて結構さわやかな読後感に浸っているうちに、以前買って途中で読了をあきらめた数学書があるのを思い出し、本棚奥から「零の発見」(吉田羊一 岩波新書)を発見して再チャレンジ。しかし結果はやっぱり途中放棄。ただ、いい睡眠薬にはなったようで、読書効果は零ではありませんでした。寝かせておくことが私にとっても同書にとってもよいようです。
 さて先日石母田正「平家物語」について書きましたが、平家を滅ぼして成立した鎌倉幕府の最期に関する本もついでに読んでおこうと一気に読了したのか伊藤喜良「後醍醐天皇と建武政権」(新日本新書)。1333(元弘3)年5月7日六波羅探題が後醍醐側の武将たちによって陥落、自身も新田義貞に攻められる中鎌倉でその知らせを聞いた最後の得宗北条高時の無念極まる姿を、なぜか結構リアルに想像してしまいました(結局高時は22日自害。鎌倉幕府滅亡)。さらに滅亡話のついでにと読んだのが弓削達「ローマはなぜ滅んだか」(講談社現代新書)。これもわかりやすくてお薦めです。
 やっぱりわたしは基本文系人間ですな。
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by takeshi_yamagen | 2016-02-12 13:25 | 積ん読・乱読・熟読日記

ここんところの積ん読・乱読覚書① 6年かかって読み切りました

 16.1.5
 昨年後半あたりからの私の読書遍歴。
 まずは不破哲三「マルクス、エンゲルス 革命論研究上・下」
 労働者党が議会で多数を得て革命を遂行する多数者革命の道をマルクス、エンゲルスの二人が各国の実情を深く分析しながら一貫して模索していたことを詳しく解明。感想を言いだしたら切りがないのですが、スターリン独裁などの起源をマルクスに結びつけようとする御用学者たちの姑息で皮相な主張を一撃のもとに葬りさる痛快な書であることは確かです。
 ところで、この上下あわせて700ページの及ぶ同書、私は読みきるのに足掛け6年かかりました。積ん読期間が長かったわけですが、「遅読にもほどがある」と叱責されるか「読みきったのは偉い」と賞賛されるか、これはみなさんのご判断次第。
 同じく長期間積ん読状態にある「エンゲルスと資本論 上」に今とりかかりつつあります。今度は長くとも5年くらいで読み切りたいものです。
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by takeshi_yamagen | 2016-01-05 23:53 | 積ん読・乱読・熟読日記