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津 軽 紀 行 ⑨ 大阪人は青森でも大阪人でした ―ランプの宿 青荷温泉―

 11.8.18
津 軽 紀 行 ⑨ 大阪人は青森でも大阪人でした ―ランプの宿 青荷温泉―_c0133503_15282340.jpg 山あいの一件宿の扉を開けると、ヒバの木の香り、ちょっと蒸せるような厨房の匂い、さらにはかすかな湯の温かみが混然一体となった空気、そしてなによりもやたら暗い空間が私たちを迎えてくれた(写真)。
 そう、青荷温泉は、灯りはランプしかないのだ。「蛍光灯がない時代ってこんなに暗かったんだぁ」といきなり実感させてもらった。蛍光灯どころかこの宿には厨房以外には電気そのものが通っていない。当然テレビはないし、冷蔵庫もない。携帯は何度かけてもやっぱり圏外…、まるで吉幾三の昔の歌みたいなところだ。ついでに言うと、有名人の色紙も全くない(これはいい!!)。
 夜が更けると、時おり聞こえる宿泊客がはしゃぐ声も、ほの暗いランプの灯りでは届かない闇の中に静かに吸い込まれていく。やがて風呂に入る以外にすることがないことに気付かされ、しばしなんにもしない贅沢を堪能する。ただ、息子だけは「コンセントないのは洒落ならへんで」とちょっと戸惑っている様子。彼がこの贅沢を理解するにはもう少し時間が必要か。
 露天風呂に再度浸かって10時には就寝。“ピー、ピー”となにかが鳴く声だけが山あいの星空に響いていた。

 翌朝、宿の方に昨夜の鳴き声の正体を伺うと「あれはカモシカの雄が雌を呼ぶ声だぁ」との答。毎年5月から8月中頃までが彼らの発情期であることを教えてもらった。
 ところで、朝食の際、隣に座られたつくば市にお住まいのAさん、聞くと御出身は大阪市阿倍野区とのこと。私が「電気がないと思った以上に夜することなかったですね」と話しかけると、「だから、人間にとってもカモシカにとってもここは「子宝の湯」になるんじゃないですか」といきなりボケるAさん。「それって、湯の効能ちゃいまんがな!」とすかさずツッコミ返す私。
 大阪人は青森でもやっぱり大阪人だったというお話。
by takeshi_yamagen | 2011-08-18 00:04 | 山元のすべらない話