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被爆の惨状を伝える資料とは ―広島原爆資料館の被爆人形撤去報道に想う②―

 13.8.14
 さて、広島市が平和記念資料館(原爆資料館)の展示物のリニューアルに際し被爆者をイメージしたマネキン人形の撤去を決めたことに対して、市民から反対の声が上っていると報じられています。「凄惨な被爆の惨状を伝える資料については基本的にありのままで見ていただくべき」「被爆者の写真や衣服など、実物の資料を重視した展示にする方針で、創作性の高い人形は必要なくなったため」というのがその理由とのことです。 
 私は写真や衣服の展示を否定するものではありませんが、それでも広島市にあえて問いたい。
 被爆者の写真が実物と言えるでしょうか。衣服はあくまで物であり凄惨な被爆な惨状を伝えるのはその衣服を着ていた生身の人間ではないでしょうか。
 かつて長崎市が試みたような遺体、あるいは遺骨の実物を展示するくらいの決意がないのであるならば、広島市は被爆人形の撤去を中止すべきだと私は考えます。創作性が高いことがよくないと言うのならばより実態に近い人形をつくり、凄惨な被爆者の惨状を伝える努力をすべきではないでしょうか。
 なお一部に子どもが怖がるという声もあるようですが、原子爆弾は非人道的な大量殺戮兵器であることにその本質があり、そもそも怖いものなのです。それをできるだけリアルに示し後世に伝えていくことが原爆資料館の使命ではないでしょうか。それでも子どもの教育上よろしくないというのならば、それこそリニューアルの際に子ども用順路を設ければいいだけの話です。
 広島と長崎の原爆資料館が、心から涙することも魂を揺さぶられることもない「ただの博物館」になっていくことを私は恐れます。

 追伸;日頃の御愛読ありがとうございます。本日で当ブログも開設6周年を迎えました。
 
 

by takeshi_yamagen | 2013-08-14 21:37  

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