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「当たり前」を守る人、望む人、恐れる人 -映画「母べえ」に思う-

 08.2.10
「当たり前」を守る人、望む人、恐れる人  -映画「母べえ」に思う-_c0133503_15273061.gif 一昨日、映画「母べえ」を見てきました。
 野上家はドイツ文学者の父滋(坂東三津五郎)、母佳代(吉永小百合)、そして小学校に通う二人の娘、初子・照美の4人家族。互いを「母べえ」「初べえ」などと呼び合う幸せな家庭に、ある日警察が踏み込み、滋が反戦思想を理由に治安維持法違反で連れ去られます。佳代は夫を信じ、精一杯家庭を守り抜こうとします。
 鑑賞後、気付いたのは野上家のまわりの人が皆やさしかったこと。反戦思想を持つ人物がいる家は、よくまわりから孤立しているように描かれることが多いだけに意外でした。
 おそらく、戦争という狂気の時代を前にしても、普通の暖かい家庭を守りたいという「当たり前」のことを言っている野上家の人たちに、まわりの人々が心のどこかで共感を寄せていたからでしょう。
 そして、その「当たり前」を求めて野上家にはたくさんの人がやってきました。その象徴的な存在は、奈良から ”ふらっ”とやって来た佳代の叔父仙吉(笑福亭鶴瓶)。「世の中は金」と子どもたちに言い切ったり、「贅沢は敵やない、ステキや」と国防婦人会に毒づいたりと、その発言の過激さゆえ、誤解を招くことの多い彼でしたが、言うことはどれもどこか真理をついており、そして、なによりもなんでも言いあえるという「当たり前」を彼は身をもって示していたように思います。
 滋は、「当たり前」を崩す元凶が戦争であることを見抜いたゆえに権力に捕らえられた。しかし、その「当たり前」の生活を守ろうとする人々の思いこそが、権力の最も恐れるところでもある…。山田洋次監督はそれを言いたかったのではないでしょうか。
 あまり筋をぺらぺら話してしまうと松竹映画に怒られるので、このへんにしときます。是非、映画館に足をお運びのほどを…。

by takeshi_yamagen | 2008-02-11 15:29 | 銀 幕 日 記  

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